【Adjust最新インタビュー】ATT導入後、アプリマーケティングはどう変わるか

【Adjust最新インタビュー】ATT導入後、アプリマーケティングはどう変わるか

従来のアプリマーケティングの在り方に大きな影響を与える、AppleのATT(App Tracking Transparency)フレームワーク導入によるIDFAのオプトイン化。昨年秋から2021年初頭へと延期されたiOS14のアップデートは、3月末時点でまだ実施されておりませんが、対応に向けた準備を進めているアプリマーケターの方も多いでしょう。

関連記事:IDFA問題で変わるアプリマーケティングと今後の予測(APP BRAIN)

APP BRAINでは、これから過渡期を迎えるアプリマーケティングの変容に焦点をあて、皆様のビジネスに役立つコラムをお届けしてまいります。今回はAdjustの佐々直紀様をお招きし、iOS14のアップデートが直前に迫るなかでAdjustの見解や今後の対応について詳しく話を伺いました。


Adjust 日本ゼネラルマネージャー 佐々 直紀 氏

1974年生まれ。2000年4月からデジタルマーケティングに携わり、オンラインモールのキュリオシティ、Yahoo!ショッピング、ショッピングサーチビカム、リターゲティング・DMPのVizuryにてAE、AM、マーケティング業務を経験。2016年1月からTUNEの日本法人の立ち上げメンバーとして、本格的にアプリ計測分野に参入、2016年11月よりAdjustに参画。数々のスタートアップの立ち上げから軌道に乗せた経験を生かし、ゼネラルマネージャーとしてAdjustの日本オフィスを統括している。

 

(聞き手:ナイル株式会社 高階良輔)
※本記事における発言は2021年3月30日時点での発表および情報に基づいた内容です。

 

ATTフレームワーク導入でAdjustはどう変わるのか

高階:アプリ事業者の間でATT関連の話題への関心が非常に高まっており、APP BRAINの読者もいろいろと気になっている点について本日はいろいろとお話お聞かせいただければと思います。まずAppleが、プライバシーポリシーの中でこれまで以上にユーザーのデータ収集や活用を制限をかけようとしており、これを守らないとアカウントをBanしますよというところまでガイドラインで言及していますが、Adjustではこれについてどう解釈していますかしょうか?

佐々:今回のポリシー変更は、広告主の制限を増やす一方で、ユーザーにとっては大きなメリットがあるものだと思います。マーケターにとって、取得できるデータが制限されるということは、正確なデータを把握できる領域が狭まり、分析の精度低下やリタゲの対象も狭まり従来と比較してインパクトが減ってしまいますが、プライバシー保護はAdjustのコアバリューでもあるので、可能な限りAppleの規約変更に適応しつつ、広告主を最大限支援したいと考えています。

高階:改めて、Appleとしては今回どういうことを実現したいのでしょうか?

佐々:そうですね、これまでIDFAがユーザーの理解や同意なしに色々なところで使われている状態を是正したかったということだと思います。今後は、ユーザーに対し許可を求めていくことで、許可が取れたら今まで通り細かいデータが取得できる環境が作られていくことになると。

高階:なるほど。Appleは、個人情報の所有権はユーザーにあるという考えのもと、プライバシーポリシーの変更をしたということですかね。

佐々:恐らくそういうことだろうと考えます。

高階:このポリシー変更に関して、端末やユーザーの特定ではなくアトリビューションの特定であれば問題ないと解釈しているMMPもありますが、それに対してどう思いますか?

佐々:Apple公式ガイドラインでは、IDFAを用いた確定的アトリビューションにはユーザーの同意が必要と明示されています。確率的アトリビューションについては、ユーザーの識別やデバイスの特定ではなく、あくまで流入元を推測するものなので、Appleの指摘するフィンガープリントには当たらないと考えています。

ただ、将来的に確率的アトリビューションにも制限がかかる可能性を見据え、Adjustとしてもこれに沿った機能開発を進めています。今後もAppleの方針に従うことになります。

高階:現時点では問題ないと判断しているが今後はわからないということですね。今後IDFAの取得が困難になることによって、Adjustが提供しているソリューションに影響が出る可能性はありますか?

佐々:機能自体への影響はありませんが、変化に対応して随時開発を行っていく必要はあると考えています。

高階:ATTフレームワーク導入を受けて、SKAdNetworkへの関心が高まっていますが、広告主からのSKAdNetworkでの計測やレポーティングの機能拡充ニーズも強まっていますか?

佐々:現状ではお答えするのが難しいです。SKAdNetworkに対応しているメディアはまだ十分とは言えず、対応済みのメディアでもデータの反映を確認している状況のところも多く、各プレイヤーが配信から分析までスムーズに運用するにはもう少し時間が必要と感じています。また、広告主にとっては制限も多く、リアルタイムでの分析やLTVの取得もできません。

こうした点を踏まえると、SKAdNetworkが広告主にとってどれほど有用と言えるのかがまだわからない状況です。SKAdNetworkが実用的でないと判断されれば「いかにユーザーにIDFAの同意をしてもらうか」という方向にシフトしていくと思います。

高階:現時点でSKAdNetworkのみで計測する予定のメディアはありますか?

佐々:現時点で知る範囲ではありません。計測がSKAdNetwork1本になると広告主としても扱いにくいため、SKAdNetworkのみに絞ったメディアはまだ出てきていない状況ですね。

SKAdNetworkで配信する場合においても、AdjustでトラッキングURLを発行する従来の計測方法も併用することをお勧めしています。これにより、SKAdNetworkと従来のレポーティング環境でそれぞれにインストールは計上されるものの、同意を得られたユーザーについては詳細データを確保することができます。

また、SKAdNetworkが対応していないWeb面への配信についてもアトリビューションを推測することで、Probabilisticアトリビューションがキャンペーンパフォーマンス分析をカバーします。

Adjustにおける今後主要となるアトリビューション計測

  1. SKAdNetwork
  2. Deterministic Attribution(確定的アトリビューション )
  3. Imprecise/ Probabilistic Attribution(確率的アトリビューション)

Appleは4月に入り、Apple社はAppTrackingTransparency(ATT)に関連するSDKの制限を開始しました。これを受けて、Adjustはこの問題に対応するAdjust SDK 4.28をリリースしました。この最新SDKを実装してApp Storeに提出されたアプリは、すべて承認されていることを確認しています。この出来事を踏まえ、今後主要となるアトリビューション計測についてAdjustは、上記のブログで各計測方法についてとその組み合わせのベストプラクティスを解説しています。Adjustとしては、SKAdNetwork、DeterministicおよびProbabilisticの3つのアトリビューションの手法を組み合わせる手法が、最も有効であると考えています。(2021/4/2時点) Adjust公式ブログより

[2021/4/19追記] AdjustではAppleのiOS 14.5とそれ以降のオペレーションシステムに対応し、SKAdNetworkと併用可能な「アトリビューションプライバシーモデル(Attribution Privacy Models)」を提供すると発表。このモデルはAdjustの包括的なアプローチで、トラッキングに同意したユーザーは今までと同じように計測でき、同意しないユーザーをAdjustがどのように扱うかを細かく設定することが可能。トラッキングに関するユーザーの選択を尊重するため、確率的アトリビューション (Probabilistic Attribution)と拡張プライバシー計測(Extended Privacy Measurement)という2つのアトリビューションプライバシーモデルを用意している。(※詳細についてはAdjustヘルプセンターを参照)

Adjustの新機能「コンバージョンモデリング」について

高階:ATT導入への対応として、Adjustはコンバージョンモデリング(Conversion modeling)という機能を発表していますが、これはどういうものなのでしょうか?

佐々:細かい仕様はまだ開発中ですが、基本的には統計学を用いた予測レポートを提供します。これはIDFA取得に同意したユーザーのデータをもとにして、IDFA取得に同意していないユーザーの流入元とアプリ内行動を予測するという機能です。

ATTフレームワーク実装後、恐らく多くの広告主様側で「同意が取れたユーザーのデータを使って残りのユーザー行動を予測する」という考え方で分析をされていくかと思うので、それをAdjustが代わりに提供するというイメージになります。

高階:なるほど。分析の精度はどのくらいなのでしょうか?ユーザーの同意率によって変わってきそうな気がしますが。

佐々:分析の精度は同意率に比例しますが、10%の同意率でも高い精度でレポートを確認することができることを確認しています。どれほどの精度かという点に関しては、現状ではお答えするのが難しいです。ただ広告主にとって精度は気になるとこだと思うので、今後何かしらの形で発表できればと思います。

高階:コンバージョンモデリングではどういった指標が確認できるのでしょうか?

佐々:ネットワークごとのインストール・アンインストール数、アプリ内課金などが確認できます。最終的な見え方は確定していませんが、従来のレポートと同じ見え方を想定しています。

高階:予測データ分のローデータもダウンロード可能ですか?

佐々:ローデータという観点ではできません。基本的に、ローデータが確認できるのはIDFA取得に同意したユーザーのデータになりますが、同意しなかったユーザーについては一律で非同意ユーザーというフラグのついた状態でのデータ転送となります。予測後の流入元が反映されたデータをローデータとして転送することはできません。ローデータではなく、予測後の集計結果を管理画面からダウンロードすることは可能になる予定です。

ただし、ユーザーの「ATTフレームワークの同意ステータス」のデータは、同意していないユーザーも含めて確認できます。ステータスは「同意・拒否・未回答・端末による制限」の4種類があります。一部のスマホはATTフレームワーク自体を制限しているので、そういった端末の場合は4つ目の「端末による制限」に含まれます。

高階:コンバージョンモデリングの範囲外になるメディアや条件があれば教えてください。

佐々:現状では特にありません。上記の同意ステータスを活用して、統計的に予測を立てることはどの広告主も自然と行うのではないでしょうか。同意したユーザーのデータを使用することには特に制限がないと考えています。

Adjustの管理画面はどう変わるのか?

高階:続いて、具体的なレポート画面についてお聞きしていきたいのですが、Adjustの管理画面上では、SKAdNetworkのレポートはどのように表示されるのでしょうか?

佐々:SKAdNetworkと従来のAdjustのレポートは基本的に別の画面で表示されます。Adjustのレポートには、IDFA取得に同意したユーザーのデータと、コンバージョンモデリングの予測レポートが表示されます。

現状、レポート環境は2つ提供する予定です。ひとつはData Canvasで、SKAdNetworkをグラフ化して全体像を把握するために新しく提供するものです。近い将来、SKAdNetwork以外の従来の計測の分析にも使っていただけるようになります。もうひとつはAdjust Automateというもので、これは既存のレポート機能の中にSKAdNetworkのデータを流し込んだものになります。

Adjust_DataStudio_image

▲データビジュアル分析ツール「データキャンバス(ベータ版)
(SKAdNetworkの過去30日間のキャンペーンのインストールvs.再インストール)

AdjustAutomate_ユーザー同意した

▲「Adjust Automate」、SKAdNetworkデータの表示にカスタマイズした状態
(従来の計測とSKAdNetworkを同時に表示して比較)

 

高階:計測方法が異なる2つのレポートを管理することになると思いますが、推奨する使い方はありますか?

佐々:どちらかだけではなく、SKAdNetworkとAdjustのレポートを並行してご使用いただくのがよいと思います。ユーザーが広告をクリックした際に、SKAdNetworkとAdjustのクリックを同時に踏んでもらうことが出来るんですね。そうしますとどちらのレポートにも計測フレームワークに応じた数字が上がってきますし、SKAdNetwork以外のデータはコンバージョンモデリングにおける推計の材料にもなります。

また、今後SKAdNetworkに対応しているメディアが増えていけば、SKAdNetworkで成果を比較するのがよいと思います。ただ現状では対応メディアが十分ではないので、ユーザーの同意率を高めながら従来のAdjustレポートを並行で使っていく方がよいと思います。あとは、SKAdNetworkとMMPのデータは同じ土俵のデータではないので、正確な比較はできないと考えていただいた方がよいです。

高階:広告主によってはレポートの数字をもとにメディアへの支払いを行っているケースがあると思いますが、その場合はSKAdNetworkとAdjustのどちらを参考にするべきだと思われますか?

佐々:難しいですが、メディアの課金体系によると思います。クリック課金なのか、そうでないかといった状況にあわせて使い分けていただくとよいと思います。

高階:これまでは、IDFAを使って取得したデータが他のデータよりも優先されていたと思いますが今後データの優先順位に変更はあるのでしょうか?

佐々:ありません。IDFA取得に同意したユーザーのデータが引き続き最優先です。確定的マッチングができるものが優先され、その次に確率論的なマッチングの順番になります。

高階:コンバージョンモデリングのレポートでも優先順位に変更はないのでしょうか?

佐々:ありません。コンバージョンモデリングは、従来の全体データをもとに推計しているので、元のデータに優先順位が反映されている形です。

高階:SKAdNetworkはAppleから管理画面が提供されず、MMPを利用しないとデータが確認できないとされています。SKAdNetworkの管理画面も有料での利用になるのでしょうか?

佐々:Adjustでは「SKAdNetwork対応ソリューション」を無償で提供する予定です。同意を得るためのポップアップ表示やコンバージョンの設定なども含めて、広告主が自分で実装するよりもはるかに手軽にご導入いただけると思います。もちろん、SKAdNetworkだけを利用したい場合でも無償です。

Twitter、Facebook、Googleはどうなるのか

高階:次に、ATTフレームワーク導入後の各メディアの計測方法についてお聞きしたいのですが、まずはFacebook、Twitterはどういう対応になりそうでしょうか?

佐々:TwitterとFacebookはSKAdNetworkの対応が進んでいます。Adjustとしては、ユーザーの同意をベースに引き続き従来の計測の仕組みにおいてもキャンペーン効果を測定していく予定ですが、これについては両社の対応や方針に従っていきます。

高階:ということは、IDFAの許諾が取れたユーザーについては今後もSKAdNetwork以外での計測も継続して可能ということですね。そのデータはAdjustのレポート上で閲覧できるのでしょうか?

佐々:そうですね。ユーザーの同意が取れていれば、ATTフレームワーク内でのパフォーマンス測定は継続となります。ただ、各々APIの仕様が違うのでTwitterとFacebookでアトリビューション判定に差がありますが、基本的にはAdjustからデータを送り、メディア側で判定して、データを戻してもらうという流れでレポートには反映されます。

高階:Googleについてはいかがでしょうか?

佐々:現時点ではわからないですね。Googleから公式の発表がされていないので、対応時期なども見えない状況ですが、方針が固まればすぐに連携の準備をします。

高階:Googleは独自にModeled Conversionsという仕組みを導入するとしていますが、この情報はAdjustのレポートにも反映されるのでしょうか?

佐々:Modeled Conversionsのデータを取得する環境はあります。ただ、具体的にAdjustとどのように統合するのかは未定です。

高階:先ほどSKAdNetworkとAdjustのレポート画面が分かれるというお話がありましたが、Googleのレポートはどういう表示になるのでしょうか?

佐々:こちらについても未定です。今後追って発表する形になると思います。

アプリ、Webメディアそれぞれの対応

高階:次にメディアごとの対応についてお聞きしていきたいのですが、まずアプリメディアの計測方法はどういったものになる予定でしょうか?

佐々:IDFA取得に同意しているユーザーは従来どおり計測し、Adjustのレポート画面に反映されます。同意がないユーザーはコンバージョンモデリングの予測レポートを確認いただく形になると思います。

高階:従来のレポートの内容から変更はあるのでしょうか?

佐々:従来と同じ粒度で確認いただけます。各クリエイティブレベルまで表示されます

高階:アプリメディアの同意についてお聞きしたいのですが、広告主側での同意と、配信側での同意をかけあわせて「どちらでも同意したユーザーのデータのみ表示される」という認識で間違いないでしょうか?

佐々:コンバージョンモデリングを使用せず、同意ユーザーだけを見る場合はその通りです。

おそらくですが、広告主と配信面であれば、配信面のアプリの方がユーザーの同意率が高いと予想しています。配信面のユーザーはもともと「アプリには広告が出る」というつもりで利用していますし、「どうせ出るなら自分向けに最適化された広告が出た方が良い」と考える人も一定数いると思います。

また「IDFAをオンにするとアプリ運営者に広告収益が入りやすくなる」と運営側への配慮から、ユーザーが積極的に同意していくということも考えられます。広告収益が減れば、アプリ自体が衰退する可能性もありますし、サブスクモデルへの転換で有料になるくらいなら同意しようという認識も多少広がると思います。

高階:広告主側の同意率はどれくらいになると予想されていますか?

佐々:様々な説がありますが、Adjustが広告主と共同で行っている実験では20-40%ほどの数値になっていて、高い例だと60%ほどの場合もあります。悲観するほど同意率が低くはないのではないかというのが予想です。

高階:なるほど。広告主側で同意率をあげていくためには具体的にどういった対応をしていくべきなのでしょうか?最近、少しずつ許諾に関する案内が増えてきたように思います。

佐々:ユーザーに対し、同意のポップアップが出る前に説明を挟むことが大事だと思います。「これからポップアップを表示しますが、これはこういう意味です」といった説明を出さないとユーザーに意図が伝わらないし、反射的に拒否されてしまうと思います。

高階:確かにそのアプローチは大事ですね。私もこの間、突然表示されて瞬間的に拒否を押してしまいました。

佐々:Adjustのコンバージョンモデリングの場合、配信側での同意の有無は関係なく、広告主アプリで10%以上のユーザーが同意してくれれば高い精度で推計ができます。こちらに関する詳細なメカニズムなどは今後発表となりますが、配信側のことは考えずに、自社のアプリでの同意率10%を意識していただければよいです。業界全体で最低限その数字は確保したいと思っています。

高階:次に、ウェブメディアはSKAdNetworkが使用できませんが、実際ウェブメディア経由のアトリビューションは全体の何%ぐらいになるのでしょうか?

佐々:かなりあると思いますが、具体的な割合は出せないのが実情です。QRコード、メールマガジン経由などの流入もあるので、そこからウェブメディアのみを抽出するのは難しいです。ただ、諸外国に比べると日本はウェブメディア経由のアトリビューションがかなり多いとは思われます。

ウェブメディアの場合、「Probabilisticアトリビューション」と呼ばれる確率論を用いた計測になります。冒頭に申し上げた通り、ユーザーの識別やデバイスの特定ではなく、あくまで流入元を推測するものでAppleの定義するフィンガープリントとは異なります。ただAppleのガイドラインへの解釈は広告主によって違いがありますので、この機能を全体としてオン/オフができるようにしています。機能提供の継続や、機能変更については今後もAppleのガイドラインに従うことになります。

コンバージョン値の設定はどうなるのか

高階:続いてSKAdNetworkのコンバージョン値の設定について、Adjustは「イベントベース(event-based)」と「バリューベース(value-based)」という2つの設定方法を提供するとしていますが、それぞれの特徴や活用方法をお聞きしたいです。

佐々:「イベントベース」の場合、コンバージョンとして計測するイベントを6つまで選ぶことができます。Adjustを既に利用されている広告主の方は様々なイベントを設定していると思うので、その中から6つをお選びいただけます。

また、SKAdNetworkには計測期間のタイマーがあるのですが、そのタイマーが切れるまでの間、どのイベントが発火したかを計測できます。

高階:これはAdjust独自の仕様なのでしょうか?

佐々:はい。ただ、指定できるイベント数を最大6つまでとしているのは、Appleの仕様を工夫したものなので、同様の機能を提供しているMMPもあります。そもそもコンバージョン値は、広告主が自分で設定すると最終的に1種類のイベントしか計測できず、実装自体もかなり面倒なものですが、MMPを導入することにより最大6種まで手軽に選べるようになります。

高階:「バリューベース」についてもお聞きしたいです。

佐々:バリューベースのコンバージョンシステムは、1つのイベントやアプリ内の収益等、特定のKPIにフォーカスしたい場合に最適な設定です。たとえばマンガアプリで「インストール後に“何冊”読まれたかを知りたい」といったケース。また、課金額も把握できます。金額の幅は広告主が自由に定められるので「100円・300円・1000円」などそれぞれのアプリの収益にあわせて設定いただき、累計も把握できるようにする予定です。

高階:なるほど。「新規ユーザーがロイヤルユーザーに近い行動をしているか」を知りたい場合はイベントベース、「新規ユーザーのROAS」を知りたい場合はバリューベースという形でしょうか?

佐々:そうですね。「初回課金したかどうか」だけを知りたいならイベントベースで問題ないと思います。インストール後の短い時間で課金額にかなりの差があるのであればバリューベースがおすすめですね。

高階:先ほどタイマーに関するお話がありましたが、広告主側でタイマーの制限はできるのでしょうか?

佐々:はい、Adjustではイベントベース、バリューベースどちらの場合も最短1時間から設定できます。SKAdNetworkはデフォルトの仕様上24時間以降にしかデータが来ないので、インストール後1時間だけをイベント計測の対象とした場合、最短で25時間後にデータが受け取れるということですね。

これのメリットは比較的リアルタイムに近い形でデータが見れること、デメリットは取得できるイベントが少なくなることです。個人的には24時間と設定してインストール後の最初の24時間だけイベントを測定するといったシンプルな使い方が浸透すると予想しています。このあたりは各アプリごとに最適な設定が異なるので、工夫が必要な部分だと思います。

■iOS 14におけるアプリ成長をAdjustがサポートします|Adjust公式ブログ
https://www.adjust.com/ja/blog/empowering-your-growth-through-ios14-adjusts-solution/

Adjustの今後の対応について

高階:最後に、今後の対応についてお聞きしていきたいのですが、まずSKAdNetworkのアドフラウド問題についてはいかがでしょうか?

佐々:増加する可能性があると思っています。デバイスレベルのデータにアクセスできるのがAppleだけになるので、それをついて新たなアドフラウドが生まれた場合、リアルタイムの除去はAppleにしか対策ができません。デバイスを大量に並べてアプリを入れていく「デバイスファーム」や、「フェイクインプレッション」といったフラウドへの対策は今後出していって欲しいと思います。

高階:Adjustとしてはどういう対策が考えられるのでしょうか?

佐々:ATTフレームワーク内でのフラウド除去は引き続き行っていきます。コンバージョンモデリングについても、フラウドを除去したデータをもとに推計するので、レポート上の数値にもノイズが出にくいと思います。

高階:なるほど。それからクリックIDについてもお聞きしたいのですが、「クリックIDは実質ユーザーの特定に繋がる」という指摘がありますが、こちらについての方針をお伺いできますか?

佐々:クリックIDはソースアプリとターゲットアプリをマッチングするものであって、個人の特定をするものではありません。アドネットワーク側で必要なものでもあるので、Adjustとしては現状クリックIDを制限することは考えていません。

高階:最後に、Adjustとしての今後の方針をお聞きしたいです。

佐々:まずは、コンバージョンモデリングの予測精度の向上が必要だと考えています。それから、SKAdNetworkへのソリューション。広告主にとっては制限か多いものですが、引き続きソリューションは改善していきたいです。

あとは、IDFAの同意率を上げるための理想的な同意フローの追求を行っています。ユーザーから同意を得るためのUIを開発して、広告主の方にソリューションとして提供していければと考えています。

高階:本日はありがとうございました。

 

※本記事における発言は2021年3月30日時点での発表および情報に基づいた内容です。

 

本記事に関連する最新情報

iOS 14への準備と対応|Adjust
https://www.adjust.com/ja/product/ios-14/

Apple公式ページ「ユーザーのプライバシーとデータの使用」
https://developer.apple.com/jp/app-store/user-privacy-and-data-use/

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