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2019年のアプリマーケティングについて、AppsFlyer Japan 大坪直哉氏と、Liftoff天野 耕太氏を招き、今年1年を振り返りながらアプリマーケットを語り尽くす「年末特別企画」の後編。
今回は広告不正の問題にフォーカスし、国内アプリマーケティングにおける現状と課題、各社が2019年に感じたことから今後の展望についてお届けします。
前編はこちら
https://app-brain.net/blog/marketing/4378/
目次
ナイル坂井(以下、坂井): 今年AppsFlyerさんが発表された「パフォーマンスインデックス」を元に、2018年からの変化について伺っていきたいと思います。
AppsFlyer Japan 大坪氏(以下、大坪氏):今年、グローバルにアトリビュートされたインストール合計数で、初めてGoogleがFacebookを抜き首位になりました。ユーザーのSNS利用状況などから広告主側の印象が変化しているのではないかと考えています。また一方でFacebookはグローバルパワーランキングで引き続きトップを保持しています。
2019年の動きとして最も面白かったのは、前回のランキングには居なかった「TikTok Ads」が入ってきたことですね。アプリとしてユーザーに認知されていた「Tik Tok」が広告媒体として著しい成長を見せています。
▲ボリュームランキング(左)、パワーランキング(右)AppsFlyer「パフォーマンスインデックス」より
Liftoff 天野氏(以下、天野氏):そうですね。アプリのユーザーを獲得するという意味では昨年の時点で既に伸びていたと思いますが、媒体として一番伸びてきたのは恐らく「Tik Tok」でしょうね。
ナイル坂井:ユーザー視点でも広告のボリュームがだいぶ増えてきたなと感じました。ブランディングとして多くの企業が活用していて、クリエイティブに関してもユーザーが実際に上げているようなものの方が効果が良いです。インフィード広告と同じですね。制作費をかけなくても、ブランディングを損ねず高い成果を出せるのが「TikTok」の特徴です。
天野氏:全体の印象でいくとやはりグローバルでGoogleとFacebokのシェアがかなり大きいくなっていくなかで、違うチャネルがどのように使われているのか、どこが生き残っていくのかがますます重要になってきた流れを感じます。
広告主側からすると予算が少なければGoogleとFacebookだけやっておけばいいという考え方もありますが、もっと予算を使って増やしたい、一部媒体への依存を避けるために分散させたいなど何かしらの理由で課題を抱えている企業も多いのではないでしょうか。そういう人達が次にチャレンジする媒体がどこになってくるのかが、業種・地域別でこのランキングにも現れてくるので非常に気になりますね。
大坪氏:Liftoffさん的には、この状況からどういう展開を考えられているんですか?
天野氏:僕らは日本への参入も遅かったこともあり、いかにGoogle・Facebookなどの大手以外で使われる媒体のうちの1つとして選んで貰えるかと当初から模索してきましたが、日本と海外における違いを最近感じています。
坂井:それは媒体の選び方に違いがあるということですか?
天野氏:海外ではGoogle、Facebookも勿論使いますが、それ以外だとプログラマティック等のパートナーを1社か2社選定して付き合うのが一般的かなと思います。もし、そのパートナーが自分達のマーケティングの方針を分かっていなければ、パートナーとして相応しくないので別のところに変えます。
日本だと、以前は大量の媒体を横並びで使ってそれを管理できていないという話もよく聞きましたが、どうしてもそれらのうちの1社として扱われる難しさを感じていました。逆に最近はそれらの媒体を一切使うのをやめたケースも聞くので、両極端だなと感じます。我々としては、広告主のパートナーとなる1社2社のポジションに、どうやって選んで頂けるかをグローバルで展開しているので、その方針が合う企業さまとお付き合いをしています。
大坪氏:あれもこれもってなりがちなのは、日本のマーケターのモバイルマーケティングに関する自社なりのスタンスや軸が不足していることが根源的な問題なのではないでしょうか。言い換えればスタンスを決めるために必要な知識が不足していると言えるかもしれません。海外だと自分達のスタンスやポリシーをはっきり持っていて、それが実現できるか否かで判断しますよね、予算は設けずLTVがCPAより大きい限りいくらでも投下するとか。
天野氏:そうですね。例えばゲームのデータ分析が得意な会社だったり動画重視だったり、広告主側で自分達がどういう媒体をパートナーに選ぶべきか判断軸を持っているのが一般的かなと思います。
坂井:ディベロッパー側のマーケ担当者と代理店がCPIの単価とボリュームでしか会話をしていない状況を見ていると、もっと事業にコミットする捉え方が必要だと感じています。
天野氏:複数媒体を使うこと自体が悪いわけでなく、それぞれの媒体特性を理解したうえで効果的に使えているのかが語られていないですよね。
坂井:そうした判断をするうえで、AppsFlyerさんのこのインデックスが非常に役立つ情報になりますよね。中でも注目すべきインデックスはどこでしょうか?
大坪氏:「グロースインデックス(グローバル)」を見てもらうと、市場に参入したばかりの新しい媒体が出てくるのでチェックして欲しいですね。新しい媒体を探しているマーケターさんであれば、実際に使って効果を試してみることにも繋がりますし、僕らとしては、今までなかった媒体がこのランキングに入ったタイミングで、ぜひ試して頂くことを望んでいます。
▲グロースインデックス:グローバル(左)日本&韓国(右)AppsFlyer「パフォーマンスインデックス」より
坂井:先程、天野さんから媒体特性の話がありましたが、代理店側もこうした情報を集め、データを分析する能力も広告主への提供価値として重要になってきますよね。
大坪氏:そうですね。その提供価値が出せていないという現状がフラウドに手を染めてしまうことにも繋がっているのではないかと、つい先日も代理店からの提案内容を聞いて絶望してしまったというマーケターさんの話を聞きました(苦笑)
天野氏:これは明らかにおかしいと気がつける知識を持っていないと怖いですよね。広告主側が指摘しない限り、例えば一部の数値を開示していないような怪しい媒体はずっと生き残ってしまうので。海外では問題になっている媒体を日本で通用させてしまっている、日本は甘いから大丈夫だと思わせていることが大きな問題で、僕は会社の立場を超えて日本人としてこの、この現状に悔しいと感じることがあります。
坂井:それ、めちゃくちゃわかります!全体の広告予算のうち海外DSPにかける割合が10%程度しかないので、そこに対する意識が低んですよね。それこそUACやFacebook広告の良し悪しの影に隠れてしまう。最低限の手をかけないならむしろやらない方がいいですね。
天野氏:それは効率を考えると当然理解できて、10%程度の消化しかないところにリソースを使えないと代理店が判断して、「よりGoogle・Facebookに寄せた」「外部ネットワークを辞めた」という流れが2019年に日本で起きたことだと感じました。従来代理店にお願いしていたところを、インハウス化してリソースが限定された事も加速化した要因かもしれません。
韓国ではもう少し早く2017年あたりにフラウド問題が話題になったのですが、それでも盛んに媒体を探していて、代理店や広告主からの問い合わせが増えるという流れがありました。今まで使ってきたCPIアドネットワークでのフラウド被害が深刻で全部切ったので新しいネットワークを探していると。例えば、その需要を取って韓国で伸びた企業の1社がMolocoだと思います(グロースインデックスのグローバルで5位)。日本国内だと100か0で「全部辞めました」という話を今年すごく聞いたのに対して、韓国ではこういった動きがあって。
坂井:データに強い大手ゲーム会社さんほど、過去の実績ベースで会社の方針として今後一切やりませんという声もよく聞きました。
天野氏:フラウドに対する知識をある程度持っていて総合的な判断であれば良いと思いますが、それまで問題視すらしていなかった広告主や見逃していた代理店が、突然辞めますというのは正直どうかなあとモヤモヤしますよね・・・。
坂井:マーケターの知識レベルの問題だと話していましたが、これは代理店側の組織における倫理観の話にも繋がってくる問題じゃないですか。「売上があがるから良い」と黙認している状態が考えられるわけで。
大坪氏:池井戸潤の小説のような世界ですよね・・・(苦笑) 自分の会社(代理店)の業績を伸ばす為に、本来であれば知識を身につけてクライアントのビジネスにコミットしていくべきなのに、自分の会社の足元自体が揺らいでいる状態では、社内でキャリアパスを描くこともできず、問題を理解しようというモチベーションに繋がりにくい状態になってしまっている。フラウドの問題は、最終的に組織の問題に落ちていくと僕も思います。
天野氏:ナイルさんは代理店として広告主とお付き合いする立場だと思いますが、この1年間を見た時に変化を感じましたか?
坂井:今年感じた変化としては、クライアント様の中に、フラウドに対するハードKPIを自社で持つようになったところがいくつか出てきました。天野さんのおっしゃる通り、確かに韓国の企業さんは厳しい条件を持ってますね。
大坪氏:今年AppsFlyerで出した「フラウドレポート」の中でも触れましたが、不正発生率は今年の春まで徐々に下がっていたんですが、最近また急に増えてきました。
これは不正事業者の手口が進化していて、ユーザーの動きを完全に模倣する「アプリ内不正」による被害によるものです。実際に商品を購入、ゲーム内で課金しているかのように見えるので、不正だと気が付けず見逃してしまうんですよね。
不正のトレンドは今、「インストール不正」から「アプリ内不正」に移ってきていて、僕らアトリビューションツールとしてもそれを検知できるよう、日々開発をしていますが、クライアント様にもこうしたことが起きている状況は情報として認識していただきたいです。
▲AppsFlyer「モバイル不正に関する重要初見」より
坂井:最新情報をキャッチアップしたうえで、ローデータを見て判断できる社内の人間か、代理店にしか安心して任せられなくなってきますね。
大坪氏:そうですね、例えばゲームでいうと通常なら1000円程度の課金が発生するはずが、100円の課金が継続的に発生してて明らかにおかしいなとか。
天野氏:7Dのリテンションの指標で7日目だけ不自然にあがってるとか(笑)。日本でよく聞いたのが、インストール後の転換率が高いから大丈夫だと思ったら、オーガニックユーザーを計測していたので当たり前だったというケースですね。
大坪氏:通常のゲートキーピングだけでは防げない不正が今増えてきているので、AppsFlyerでは12月に新しくポストアトリビューションテクノロジーというものを開発しました。これはゲートを通過したあともモニタリングする仕組みで、従来よりも16%多く不正をブロックできることが判明しています。
リアルタイムでブロックできなかったものを遡って判定して請求対象から除外でき、海外だとクライアント様側で「Protect360の結果を正とする」と予めIOに含め運用されています。
天野氏:日本での反応はどうでしたか?
大坪氏:国内で導入頂いている企業様はどんどん増えてきていますね。僕らとしては業界の健全化は勿論ですが、お客様の課題解決につながることなら何でもやりますというスタンスで、今年は「Protect360」の価格を大きく下げました。この「ポストアトリビューション」機能も「Protect360」を導入済みであれば追加料金なしでご利用いただける形にしています。
これまで不正に使われていたお金を人材・プロダクト開発に回すことで、お客様のさらなるビジネス成長に繋げて欲しいと思っています。
坂井:フラウドで浮いた広告予算を使って、ブランディングができると良いですよね。
大坪氏:世界では既にそうなっていますが、日本国内でも非ゲーム領域のブランド企業がアプリを活用する流れが今きているので、この動きが2020年以降広がっていくんじゃないかと。
天野氏:そういったブランド企業がアプリに入ってくることによって、これまでAppsFlyer上のトラッキングポイントがオンライン完結だったところ、新たにオフラインコンバージョンが生まれる可能性も出てきますね。
大坪氏:そうですね、ユーザーが店舗で買ったものが実はLiftoffきっかけだったみたいなことが分かるようになりつつあります。既に、今年僕らがGoogleさん・ユニクロさんと一緒に行った取り組みは「Think with Google」でもご紹介しています。
天野氏:あと来年のトピックでいうと、個人情報保護法の改正に伴う影響が細かい部分も含めていろいろありそうな気がしています。
坂井:世の中の変化をしっかりキャッチアップして、目先の数字だけではなく、自分達のビジネスにどう影響するのかを考えてアクションを取ることがより重要になってきますね。
―本日はありがとうございました。
▲左から天野耕太氏(Liftoff)、大坪直哉氏(AppsFlyer Japan)、坂井直人(ナイル)
ダウンロードはこちらから https://www.appsflyer.com/jp/performance-index/
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