全てを自分事として捉える、ブランド「Snow Peak」公式アプリ開発インタビュー【スノーピーク×フラー対談】

全てを自分事として捉える、ブランド「Snow Peak」公式アプリ開発インタビュー【スノーピーク×フラー対談】

日本を代表するアウトドアブランド「Snow Peak(スノーピーク)」が、昨年3月に公式スマートフォンアプリ(iOS/Android)をリリース。ブランドの最新情報やオンラインストアでの商品購入、会員向けサービスをはじめ、Webサイトで提供する全ての機能がアプリに集約しています。

なかでも注目したいのは、商品の修理受付がオンラインで完結する「アフターケアサービス」機能。修理をしながらユーザーに長く使い続けて欲しいというスノーピーク社の、プロダクトとユーザーに対する真摯な想いを感じることができます。

本アプリはアプリ分析プラットフォーム「App Ape」を提供するフラー株式会社との共同開発。スノーピーク本社と同じく新潟県にオフィスを置きながら、ITで地方を活性化することに注力している同社が開発した「長岡花火公式アプリ」は、国内アプリストアのカテゴリ別ランキングで1位を獲得するなど成功を収めています。

 

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「Snow Peak」公式アプリ:https://www.snowpeak.co.jp/sp/app/

 

今回の開発インタビューは新潟が誇るアウトドアブランド・スノーピーク社と、アプリビジネスを支えるフラーの2社にお話を伺いました。

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▲取材はスノーピーク オペレーションコア HQ2(新潟県見附市)にて

中央:リース能亜氏(株式会社スノーピーク 取締役 CSO

右:関根洋介氏(株式会社スノーピーク ユーザーサービス課 マネージャー)

左:山﨑 将司氏(フラー株式会社 執行役員 最高デザイン責任者)

 

「スノーピーク」アプリ開発秘話

ーまず最初に、スノーピーク公式アプリがどういうものか簡単に教えてください。
リース氏:
お客様がスノーピークの会員になってからの一連の接点を全てアプリの中に載せることを目的に開発しました。

主な機能としては5つ、①ニュース配信②商品情報の閲覧③店舗チェックイン④マイページ(購入履歴・会員ステータスの確認)⑤アフターケアサービス、になります。

ーアプリをダウンロードするユーザーはどういった層ですか?

リース氏:ファミリー層をターゲットにしているので、ほとんどが男性ですね。週末家族でキャンプを楽しむお父さん達です。

ー今回、フラー様とはどういう経緯でアプリ開発をスタートされたのでしょうか?

リース氏:着想としては我々がスマホでのビジネス展開ができていない現状と、ポイントカードをデジタル化したいという具体的な課題感からです。

山﨑氏:紙のポイントカードを電子化したいというお話を伺いました。

リース氏:これまで我々は、財布というフィジカルなスペースに入り込んでいましたが、スマホとの接触時間が増え情報収集源になっている状況で、まずお客様の端末の中に入っていかないとブランド認知がされないという考えを持つようになったんです。

ブランドアプリを持つことに対する考え方は企業によって異なると思いますが、スノーピークはアウトドアの領域を越えたライフスタイルブランドとして成長していくために、単にコストカット的な視点やプロモーション目的でアプリを作っては意味がないという問題意識が当時からありましたね。

ブランドとお客様の接点は店舗やキャンプ場をはじめ、イベント・修理・SNS・ユーザーサービスなど沢山持っていましたが、お客様の利便性を高める為にも一箇所に集中させたかった。

山﨑氏:開発前にスノーピーク様といろいろとお話をするなかで視野を広げていった結果、現在の設計になりました。

ーリリース初期はどういう機能をアプリに入れていたんですか?

山﨑氏:基本機能としては4つ、ニュース・商品情報・チェックイン・マイページを実装していましたが、各機能も現在と比較すると簡易的なものでした。まずアプリを出さないと先に進めないと思っていたので、まずリリースすることを優先した形です。

開発側とブランドの思想が重なった、アプリビジネスに懸ける2社の想い

ースケジュールの話がでましたが、初期提案~アプリのリリースまでどれくらいの期間でしたか?

山﨑氏:開発期間だけでいうと約2ヶ月です。アプリの仕様を固めるまでに3ヶ月近くかかっていました。2017年の秋頃から動き出して開発に着手できたのは年明け、リリースしたのが3月頭です。

リース氏:我々がアプリのビジネスモデルを考えるにあたって紆余曲折したこともあり、要件を決める過程でフラーさんが大変さを感じたのではないかと思います。

先のことを見据えつつも現実的な論点として、どこまでを機能に落とし込むべきかを色々と提案してくれて。デザインの面においても我々の強いこだわりや想いを理解し表現しようと前向きに取り組んでくれました。

山﨑氏:打ち合わせを通して、スノーピークさんのデザインに懸ける熱意をものすごく感じましたね。フラーがフルスクラッチでアプリを開発したのは、スノ-ピークさんが初めてだったので、どんな状況でも要望に応えて良いものにしたいと必死に開発を進めていました。

フラーのプロダクトの作り方として、自分事に引き込むことを大切にしています。今回も開発を始める前にチームメンバーとスノーピークさんの施設でキャンプを体験したり、実際にアウトドアを楽しむ方へインタビューしました。

リース氏:こうやって自分事として真摯に向き合ってくれるベンダーさんと、地元で出会えたことが我々にとってすごく幸せだなと思います。

フラーさんのように関わってくれる開発会社さんはなかなかいないですから。社長・渋谷さんの「新潟の企業をITで盛り上げていきたい」という思想も、我々が同じ新潟の三条という土地でこれまでやってきた考え方と似ていると感じましたね。

 

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Web版と同じでは意味がない、アプリで進化した「アフターケアサービス機能」

ー新たに実装された「アフターケアサービス機能」について伺う前に、サービスについてお話頂けますか。

関根氏:スノーピークは商品に保証書を付けていません。買って頂くまでの時間よりも、買ったあとの方がユーザーさんとの付き合いが長いんですよね。モノを作って売って使ってもらうというプロセスの中で、お客様と最後まで繋がっていくための方法が「アフターサービス」だと考えています。

リース氏:ブランドとして良いプロダクトを作っている自信があるからこそ、使ったものをしっかり保証していきたい我々の想いが「永久保証」に込められています。

 

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ーアプリ版の機能について具体的に教えて下さい。壊れた商品の修理をアプリ上で依頼できるものですよね?

関根氏:はい。基本的にはフォームに沿って入力して頂く形になっておりまして、依頼後は商品を①スノーピーク店頭に持ち込む、②アフターサービスセンターに郵送する、③配送業者が集荷に行く、の3パターンからお選び頂きます。商品到着後、スノーピークから修理見積をお出しし、承諾後実際に修理を行いユーザーさんへお戻しする流れになっています。

 

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ーWeb版でも修理受付がありますが、アプリに実装するにあたって工夫された点はありますか?

山﨑氏:せっかくアプリを作るのであれば従来のWebサイトと同じことをしてもしょうがないと思い、現状スノーピークさんが抱えている課題をアプリで解決できないかと関根さんに色々とヒアリングさせて頂きました。

関根氏:Webでの修理受付は2016年からスタートしていたのですが、ユーザーさん側からするとエントリーに時間がかかってしまう、壊れている箇所を正確に伝えられないという課題がありました。

オーダーを受ける我々としても、届いた商品の壊れている箇所を見つけ出す工程でオペレーションコストが発生している状況だったので、アプリでは修理箇所をより詳細に入力できる仕様にしました。

 

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▲実際の修理受付フォーム画面1

 

関根氏:修理希望箇所の写真とコメントが1対1になっているので、以前と比較して「どこを直せば良いのか」が非常に分かりやすくなりました。

山﨑氏:修理したい商品情報の入力に関しても、購入履歴と紐づけて選択できるよう改善しました。Web上だとお客様自身が購入時期を入力する方式になっているのですが、せっかくアプリ内に正確なデータを持っているので。

 

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▲実際の修理受付フォーム画面2

 

関根氏:購入履歴と修理履歴が紐付いたことによって、お客様と新たな情報を共有できるようになりました。例えば毎回同じ箇所を修理に出される場合、使い方とプロダクトのどちらに問題があるのかを考え、使い方だと判断した場合には壊れやすい原因についてお客様に伝えることができます。実際、お客様も修理見積を受け取る時点で「なんで壊れたのだろう?」という疑問を感じていますから。

リース氏:フォームの改善がアフターサービス自体の品質向上にも繋がりましたね。

関根氏:修理を繰り返しながら20年くらい使い続けているケースも珍しくないんですよ。年季の入った商品の修理依頼が届くと、「保証書を付けていない」という我々のメッセージがお客様に届いていると実感します。

ーフォームの改善以外に、Web版にはないアプリ独自の仕様はありますか?

山﨑氏:はい。お申込み後にお客様側で進捗が止まってしまう問題を解消するため、アプリ上で修理依頼後のステータスを表示できるようにしました。これも開発前のヒアリングによって出てきた課題でした。

関根氏:お客様側にボールがある状態というのは、修理希望の商品を発送して頂く、見積金額と内容を確認して承認→修理に着手、修理後のお支払い→商品のお届け等のタイミングです。

山﨑氏:画面上だと「赤」はお客様のアクション待ちで、「緑」はスノーピークさんになります。今後はアプリのアイコンにバッチを付けて通知したいと考えています。

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▲修理受付後は、各商品のステータスが表示される

 

ーアップデート後、アプリ経由での修理依頼件数はどれくらいですか?

関根氏:アップデートして最初の日曜日だけで約50件、その後1週間でトータル250300件近くエントリーが届いています。全体の3割くらいがアプリ経由で、普段からアプリを使われているユーザーさんがすぐに反応してくれたという手応えを感じましたね。管理画面から依頼内容を見ると、みなさんがアプリをすごく上手に活用してくださっているので嬉しいです。

山﨑氏:アップデート時に「写真の撮り方」など見本を入れようか考えましたが、一旦リリースしてみてユーザーさんの様子を見ることにしたので、結果的にガイドがなくても意外と上手く使われていて僕らとしても安心しました。

関根氏:こういう部分は、スノーピークユーザーさんは質が高いと改めて感じますね。

ー確かに、ユーザーさんのエンゲージメントの高さを感じます。

山﨑氏:僕ら開発側からすると、アプリストアのユーザーレビューに対してすごくそれを感じているんですよ。実際に使わないと気が付けない、よく見ているなあと思うフィードバックが多くて、アプリをブランドのギアの1つとして捉えて頂けているのを実感しました。

ユーザーと共に、スノーピークが目指すもの

ーお話を伺うなかで、ユーザーさんとの距離感の近さが印象的でした。

リース氏:ブランドがコミュニティとして運営されている要素がよく表れている気がしますね。スノーピークはブランドとユーザーの近さがベースとしてある会社なので、我々もユーザーさんに対していちキャンパーとして向き合いますし、ユーザーさんも自分事としてブランドに対して真摯に向き合ってくれる関係性があります。

関根氏:スノーピークという会社を一緒にもっと良くしていきたいという気持ちを、ユーザーさんから強く感じています。

ー最後に今後の展望についてお聞かせ下さい。

リース氏:ブランドの全体像をしっかり伝えていくうえで、やはりアプリは有効なツールです。アプリを通じてデータを収集することはオペレーションやサービス改善だけの話ではなく、ユーザーのエンゲージメント向上、経営判断にも繋がってきます。

今後もフラーさんのサポートを受けながら、アプリの機能拡大やユーザーとの接点強化を進めていく予定です。

 

ー本日はありがとうございました

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関連記事:ITで地方を活性化したい、フラーが「長岡花火公式アプリ」に込める想い(APP BRAIN)

 

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