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ナイルが運営するスマ-トフォン専門ゲームメディア「Appliv Games」の責任者・坂井直人がゲームプロデューサーとマーケティングについて語り合う対談企画がスタートしました。第 1 回目は2019年春に新作MMORPG『リネージュM』の配信を控えているエヌ・シー・ジャパン株式会社の大河内卓哉氏を迎えてお届けします。
<プロフィール>
大河内卓哉氏(エヌ・シー・ジャパン株式会社)
バンダイナムコゲームス、ブシロード等ゲーム会社を経て、2017年にエヌ・シー・ジャパン株式会社入社。現在は、2019年春リリース予定のMMORPG『リネージュM』のプロジェクトプロデューサーを務めている。
目次
坂井:大河内様の今現在の仕事としてはプロモーションがメインになるのでしょうか?
大河内氏:一部プロモーションもありますが、メインは運営・ローカライズになります。今回の『リネージュM』のような大規模タイトルの場合、マーケティングを考えるうえで全体を把握しておかないとメッセージ性もぶれてしまうので、どこの部署が何をやっているのかプロデューサーとして横断的に見ている立場になります。
運営側にもう1人プロデューサーを置いており、ビルドの状態やゲーム内イベントの流れなどは、リネージュファンにはおなじみの方に担当して頂いています。
坂井:現状のチーム体制はどのようになっていますか?
大河内氏:『リネージュM』に関しては、社内のさまざまな部署からメンバーが集結しているだけでなく、社外からこのプロジェクトに関わりたいと熱い想いを持って、『リネージュM』の為に入社したメンバーもいますね。リリースに向け、開発と運営が一丸となって今頑張っているところです。
▲大河内卓哉氏(エヌ・シー・ジャパン株式会社)
坂井:『リネージュM』について、海外でのリリースから日本版配信までの経緯を簡単にご説明頂けますか?
大河内氏:『リネージュM』は元々、全世界で伝説的なPCゲームである『リネージュ』の当時の熱狂を体験頂くために開発したタイトルでして、2017年夏に韓国でリリース、2018年には台湾でも盛り上がりを見せています。日本でも2002年にPC版がリリースされ、海外におけるリネージュ人気と比較すると大衆化とまではいきませんでしたが、国内にもファンが多く、モバイル版への注目度も高まっていると感じています。
坂井:実際、日本のユーザーからはどんな反応がありましたか?
大河内氏:Twitterを見ていると、「懐かしい!昔リネージュ遊んでた!」とか「スマホに2Dクォータービュー全盛期のゲームで来るの!?」という反応が散見され、大変嬉しいです。そうです、あの時代の熱いゲームが、スマートフォンのゲームとして登場するので期待してお待ちいただけますと嬉しいです。
一方で「今なんでこのグラフィックなの?」と書かれていることも多いですね。ただ、我々としてはグラフィックが進化した最新のゲームに慣れている人にこそ触って欲しいと思っています。その情報だけで触らないと決めるには、もったいなさ過ぎるゲームです。
なぜかというと、本タイトルは韓国で1位を獲得しリリースから19か月以上に渡ってGoogle Playで売上トップ、1日の売上が130億ウォン(約12億7000万円)を記録するほどの実績があるからです。売上だけではなく、同時接続の人数も凄いものがあります。ゲームの魅力というものがグラフィックだけではないところにあることを体感していただきたいです。
『リネージュM』の魅力はゲームの深さだと感じています。ゲーム内における自由度が非常に高く、現実世界にも通ずるリアリティを感じられる世界観が最大の魅力です。
坂井:今の時代にこのグラフィックのゲームはなかなか無いですよね。
大河内氏:はい、日本のゲーム会社でわざわざ作らないと思います(笑) 世界観にこだわったタイトルでグラフィックを綺麗に見せたいと考えるのはマーケティング上、当然の結果かと。
一方で、グラフィックの進化のみに留まらず、メーカー側がより多くの方が触れるタイトルを開発しようと数字に追いかけられるなかで、ゲームの根本的な面白さが失われてきたのではないかと思う部分があるんですよね。だからこそ昔『リネージュ』をプレイしていた人には、このモバイル版を通して昔の体験を思い出して欲しいですし、まだやったことが無い人には『リネージュ』ならではのゲーム体験をぜひ楽しんで頂きたいです。
坂井:海外版が先にリリースされている状況を踏まえ、日本独自のコンテンツを用意されていますか?
大河内氏:いいえ、基本的には世界基準のゲームバランスを日本版でも味わえるよう調整中です。注意すべきところとして意識しているのは、無理に日本独自仕様を入れないことですね。それでゲームバランスが崩れるのは避けたいという思いがあります。ただ重厚なゲーム性であるからこそ、この世界にすぐ慣れることができない人も発生することは想定されるので、イベントを含めた救済処置や表現は必要と考えています。日本仕様として注力している部分はチュートリアルですね。
坂井:なぜチュートリアルなんですか?
大河内氏:国内ユーザーのリテラシーを考慮しているからです、海外では説明不要なことが日本では通用しない可能性があると考え、リネージュ未経験者にも楽しんでもらえる形が日本仕様になります。日本独自のコンテンツを作るというのは、海外での熱狂されているバランスを一部崩してローカライズすることを意味します。それはつまり「世界で楽しまれているものが日本だと楽しまれない」、「日本人はどこか違う」と考える方もいらっしゃるかもしれません。しかし、人として楽しいと思う本質的な部分はそんなに変わらないのではないかと考えています。
坂井:せっかく世界で受けている良いものがあるのだから、そのまま味わってほしいというスタンスですね。
大河内氏:はい、そうです。同じエンターテインメントの話でわかりやすく言うと、海外で撮影されて大ヒットした映画が、日本で上映されるからと言って、無理に撮り直しや作り直しはされないのと同じですね。
坂井:本作のメインターゲット層は具体的にどういう人になりますか?
大河内氏:小・中・高・大学生の頃に『リネージュ』を触ったファーストタッチ世代にあたる30代~40代です。当時、社会人としてガッツリ楽しんだ方でいま何かしらの理由でPC版『リネージュ』から離れてしまっている方も勿論大歓迎ですし、最新ゲームを中心に遊んでいる10代~20代の方にも触って、その奥深さを実感して頂きたいですね。
坂井:事前登録を既に開始されていますが、今後のプロモーション戦略について聞かせて下さい。
大河内氏:タイトルの信頼度を高める目的として、時期が来ましたら大規模なプロモーション展開を予定しています。新しいタイトルが出る際、一番気にしているのは「長く続くタイトルなのかどうか」という点だと思っています。深層心理的に「流行ってないゲームはどうせ終わるだろう」という考えにも繋がってしまうからです。
PC版『リネージュ』の運営を17年、『リネージュ2』に関しても約15年続けているという実績を持っている我々の本気をきちんと届けられるよう、プロモーションを計画しております。
坂井:具体的にはどういったことを実施予定ですか?
大河内氏:サーバーとキャラクター名の先行登録をはじめ、PCゲーム時代の熱狂を体験した人達にSNSで『リネージュ』の当時の思い出を共有してもらう企画などを考えています。コンテンツを作る上で、既存ファンと初心者をどうやって混ぜ込めるかがポイントになってくるかと思います。
坂井:最後に、大河内さんご自身がスマホゲームに求めているものは何でしょうか?
大河内氏:そうですね、スマートフォンというデバイスが人の行動と寄り添えるようになったことで、ゲームももっと人の心に寄り添うべきだと考えています。特定の場所や施設などに行かないと味わえないゲーム体験と被らない存在、つまり人々のスマートフォンの中に第二の日常が広がっているような在り方、ゲームそのものを日常化する形が1つの答えだと思っていて、いま『リネージュM』で我々が目指しているものでもあります。
ーー本日はありがとうございました。
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