【年末特別企画】AppsFlyer・Liftoff・ナイルが2019年を語り尽くす ~LOOKING BACK AT 2019~[前編]

【年末特別企画】AppsFlyer・Liftoff・ナイルが2019年を語り尽くす ~LOOKING BACK AT 2019~[前編]

今年も残すところあとわずか。2019年のモバイル業界は、キャッシュレス決済サービスをはじめ、ゲームサブスクリプションサービスの登場、大型IPタイトルのモバイル進出、音声メディアの成長等、さまざまな動きがありました。日本国内においては2020年の東京オリンピック開催が控えている状況で、その変化のスピードも徐々に高まってきているように感じます。

今回は、AppsFlyer Japan 大坪直哉氏と、Liftoff天野 耕太氏を招き、今年1年を振り返りながらアプリマーケットを語り尽くす「年末特別企画」を前後編に渡ってお届けいたします。

前編では今年印象に残っているアプリやグローバル視点で見た日本企業のアプリビジネスについて。後編ではアドフラウド問題に触れながら、アプリプロモーション・マーケティングについて、各社が2019年に感じたことをお話して頂きます。

▲12月に移転したばかりの新オフィス(渋谷スクランブルスクエア)にて

左から天野耕太氏(Liftoff)、大坪直哉氏(AppsFlyer Japan)、坂井直人(ナイル)

 

ナイル坂井(以下、坂井): 年末のお忙しいところ今日は集まって頂きありがとうございます。2019年のアプリ市場を語りましょうという企画なんですが、まずは今年印象に残っているアプリはありますか?

AppsFlyer Japan 大坪氏(以下、大坪氏):Story Writer」というアプリですね。僕が出演している「話題のアプリええじゃないか!(TOKYOMX)」という番組のなかで今年紹介して、これは良く出来てるな~と感じました。

30秒動画(ストーリー)に位置情報をつけて投稿・シェアするアプリで、マップ上から他の人のストーリーにコメントもできるんですよ。動画の作成自体も、写真や動画を組み合わせてBGMを選ぶだけなので簡単。ライフログとしても使えて面白いなあと。

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坂井:位置情報アプリでいうと、若い世代の間では「Zenly」でリアルタイムに自分の現在地をシェアしてますよね。

Liftoff 天野氏(以下、天野氏):プライバシーの問題は別であるにせよ、ユーザー視点ではそこまで気にしてないというか、ツール的な使い方をしているなあと。この前もTwitterで、「スノボに行って雪山にスマホ落としたけど、Zenlyで見つけるから大丈夫」と、全然焦っている様子がない人を見ました(笑)。

大坪氏:おおー、ゼンリーベンリー(笑)。位置情報の扱いはどんどん二極化してますよね、世代の感覚の違いによるところですが。

天野氏:落としたスマホも見つかるって本来の使い方ではないですけど、ユーザーが独自の使い方をし始めるサービスは強いと言われています。メルカリの初期にあったような、個別の取引で「〇〇さん専用」みたいな動き。

大坪氏:企業側が主導するのではなく、独自のユーザーコミュニティが形成されるとサービスがうまく回りだしますよね。

天野氏:ビジネス視点でもう1つ付け加えるなら、アプリ単体ではなくアプリ同士の機能連携によって可能性が広げられると思います。僕はアプリ内連携が増えれば、もっと面白くなっていくような気がしていて。

大坪氏:1社の力でスーパーアプリに持っていくことが難しくても、他と連携することによって体験の質を上げていくことはまだまだ伸びしろがありそうですよね。

坂井:天野さんは印象に残っているアプリありますか?

天野氏:僕は『トツキトオカ』という妊活・出産の記録管理ができるアプリです。なぜこれを選んだかと言うと、海外進出の仕方がとてもユニークだったので。

元々は、僕が働く日本と韓国のオフィスにそれぞれ妊娠したメンバーが居て、その2人が同じアプリを使っていることが社内で話題になり、その後、開発したアマネファクトリーさんとお会いする機会があったのでお話を伺ったところ、韓国市場で広告施策などの積極的なプロモーションを行ったわけではないものの、現地ユーザーさんの間で非常に受けがよく、口コミを起点に自然と広まり、今では韓国の妊婦さんの7割が使っているそうです

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坂井:はじめから狙ってないのに7割って、かなり凄いですね。

天野氏:社内に韓国語を話せるメンバーが誰も居ないと聞いた時もびっくりしましたが、こうやって海外進出が成功していること自体がすごいなあと。

大坪氏:妊娠という体験は世界共通ですし、これからグローバルで使われるアプリになる可能性もありそうですね。

天野氏:ええ、あると思います。グローバルな視点で考えると、日本は来年オリンピック・イヤーを迎えますから、世界進出の動きがもっと活発化して欲しいですね。むしろこのタイミングで動かないのはまずいと危機感を抱く位の気持ちで。

世界から見たときの日本、グローバル市場での戦い方

大坪氏:日本の人口が100年後には現在の約半分(6,000万人)になると言われているので、自社のサービスが優位な段階のうちに海外に本拠地のある企業とパートナーを組むなりしてレベニューソースを持たないと将来的に厳しい時代がやってくると思います。

天野氏:僕はLiftoffで今年から日本と韓国のアプリマーケットを見るようになって、日本市場を客観的に捉える機会が増えたので、日本独自のやり方に改めて気がついたり、2カ国を比較して考えるようになりました。

アプリビジネスで起業する動きは日本より韓国のほうが活発のような気がしますね。元々、スタートアップに関しては、政府からの積極的な支援やAndroid開発がメインになっている点など、環境的にアプリ開発が進めやすいこともありますが、日本と比較した時にスピード感が大きく違うと思います。日本だと、果たしてこの設計で本当に良いのか検討に時間を長くかけがちですが、向こうはとりあえず作って出してから考える。

坂井:僕がゲーム会社さんから聞いた話もそれとすごく似ていて、日本は1タイトルに開発費100億円をかけ、テストを繰り返しながらゲームを完璧な状態にまで仕上げてからリリースするのに対し、中国企業だと1億円で100個のゲームを作って、PDCAの数を増やすという考え方をします。

今の時代、新規タイトルをヒットさせるのはすごく難しいので、100個出したうちの1個でも当たるよう、高速でPDCAを回して良いものにブラッシュアップして、少しでも可能性がありそうなタイトルに投資をしていく考え方を持っています。

天野氏:グローバルスタンダードなのは後者のやり方でしょうね。日本企業の、石橋を叩いて渡るようなやり方とは180度違うよなあと思います。

大坪氏:今のアジャイルな時代においては、とにかくスピードを重視して数多く出して、その中で生き残りそうな良いものにベットしていく方が、早く成功に近づけるんじゃないでしょうか。ユーザーの視点からすれば、選択肢が豊富で他に目移りもしやすい状況ですし。

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天野氏:プロモーションにおいても同じことが言えますよね。海外だと広告キャンペーンを大量に走らせて成果の悪いところからバンバン切って良い方に寄せていくやり方をしているのに対し、日本では企画を一生懸命考えてやっと方向性を見出すみたいな。このスピード感ではやっぱり海外と戦えない。

坂井:あと、最初からチャレンジしないというか、リスクがあると分かっているところには手を出したくないという考えは、マーケターさんと話していても多少感じますね。

天野氏:チャレンジしないマーケターは海外だと評価されないと思います。日本の場合、与えられたKPIに対し挑戦して外したらマイナス評価に繋がるから「一応、やらないでおこう」みたいな(苦笑)

大坪氏:積極的に挑戦する日本企業さんの話をするならば、NextNinjaというゲーム会社さんが今年35カ国に向けて配信するという挑戦をしています。これだけの数なので、当然、各国でGDPや可処分所得も違いますし、各マーケットでどの位のプライジングで出したら売れるのかも分からない、全く手探りな状態だったそうです。ゲームパックのうち1番高価なプランは99ドル、1番安いプランは1ドルに設定し35カ国で配信したところ、1番売れた国は皆さんどこだと思いますか?結果は、ノルウェーでした。

こうして、やってみないと分からないことが沢山あるんですよね。失敗しないようにというクローズドな考え方ではなく、積極的にチャレンジをしていく。

NextNinjaさんはこうしてトライアンドエラーで得た経験によって、来年さらに大きくグローバル展開ができるわけで、とても素晴らしい挑戦をしている企業さんだと思います。

2020年はハイパーカジュアルゲームに注目

天野氏:国内のアプリランキングを見ると、非ゲーム領域で革新的なアプリ(サービス)が生まれるサイクルが若干鈍化しているように感じましたが、ゲームはどうでした?

坂井:そうですね、今年は『マリオカートツアー』や『ドラゴンクエストウォーク』など、コンソールの大型IPタイトルがモバイルゲームに進出して大成功しています。逆にIP以外ではゲーム領域で大型ヒットというタイトルは、もう荒野行動以降出てないですね。

天野氏:さすがメガブランドはやっぱり強かったというか、インパクトが大きかったですね。ビッグタイトルが国内で話題を集めた一方で、ハイパーカジュアルゲームはグローバル展開が盛んになってきているので、これから面白い事例が沢山増えてくる気がしています。

大坪氏:ハイパーカジュアルゲームの流れは、2020年のトレンドとして確実に来るでしょうね。国内の大手ゲーム会社からもハイブリットカジュアルと呼ばれるジャンルのゲームがどんどん出てくれば、今後マネタイズの手法も大きく変わってくる可能性があると思っています。

日本国内では、アプリの収益に占めるユーザー課金の割合が広告と比較して圧倒的に高く、ゲーム会社もユーザーエクスペリエンスを損ねるからとアプリ内広告に消極的でした。しかし、ユーザーが大手のハイブリットカジュアルを通じてアプリ内広告に慣れてくれば、カジュアル以外の既存タイトルも含め、徐々に広告収益モデルへシフトしていく流れが生まれるのではないでしょうか。

天野氏:それはすごくポジティブな話ですね。Liftoffの日本国内におけるフォーマット別売上を見ても、2年程前は日本国内で大きめの動画やインターステシャル、リワードを流せる面自体が少なかったので全体に占める売上もそこまでだったのですが、今は売上の50%強がインターステシャル・動画になってきています。

これはさっき話していたハイパーカジュアルゲームの流れと、広告プラットフォームさんの努力によって動画リワードの市場が広がってきているからだと思いますね。

 

[後編]へ続く

AppsFlyer・Liftoff・ナイルが2019年を語り尽くす ~LOOKING BACK AT 2019~、次回はアドフラウドの最新状況についても触れながらアプリマーケティングについてのお話をお届けいたします。

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