徹底解説、IDFAのオプトイン化によって起こる今後のシナリオ

徹底解説、IDFAのオプトイン化によって起こる今後のシナリオ

2020年6月にAppleが発表したIDFAのオプトイン化。マーケターに実際にどのような影響があるのか、どういった対応をするべきなのか。

多くのアプリビジネス従事者が注目しているこの問題について、Appleの発表後からいち早く情報をキャッチアップし発信してきた正田氏(株式会社Alpha)とマーケター・森下氏(株式会社ブシロード)に、これから起こり得る変化に対応するために知っておくべきことについて詳しく伺いました。

(APP BRAIN関連記事)IDFA問題で変わるアプリマーケティングと今後の予測

IDFAのオプトイン化によって考えられる3つのシナリオ

森下:まずIDFAのオプトイン化で起きる問題として、IDFAをベースにした広告配信ができなくなることが挙げられますよね。ATTフレームワーク導入後もIDFA計測のみでコンバージョンを取っていると、コンバージョン数は激減しますし、それを使った最適化の効率も悪くなる。

今回は、そんな状況の中でマーケターはどう対応すべきなのかという話をしていきたいんですけど、その前にまずは正田さんが今後何が起きるのか、どうなっていくと感じていますか?

正田:僕は3つのシナリオが考えられると思っています。

1つ目は、もっとも楽観的なシナリオで、フィンガープリントのようなIDFAマッチングに依存しない技術での計測が継続され、現状とほぼ同じ広告配信が可能になるパターン。

2つ目は、Appleがプライバシーポリシーを今まで以上に厳しく取り締まり、Differential Privacyに準拠した計測のみが許可されるようになるというパターン。

■Differential Privacy(ディファレンシャルプライバシー / 差分プライバシー)とは
https://www.apple.com/privacy/docs/Differential_Privacy_Oveview.pdf
個人を同定できるデータを集めることを禁止する。ユーザーの習慣に関する情報を集めることでユーザーのプライバシーを侵す危険なく個人の特定に近づける技術。


そして3つ目が、MMP独自の計測が許可されず、すべてSKAdNetworkに収束するというパターンです。


【図解:IDFAオプトイン化による今後のシナリオ】

想定シナリオ1:フィンガープリントやそれに近い技術での計測が継続され、現状とほぼ同じ広告配信が可能。

正田:まず前提として、プライバシー配慮の流れから、フィンガープリントという技術が広告効果測定で使われることは無くなります。AppsFlyerではProbabilistic Modeling(確率論的モデリング)という方法に既に置き換わっており、Adjustでも近日フィンガープリントは廃止される予定ですAdjustでは、いまだ不明確な点があるというスタンスで、Appleとの協議を続け、ガイドラインに沿った対応を行う予定だそうです。※2021/1/15訂正

■Probabilistic modeling(プロバブリスティック・モデリング)とは
 https://www.appsflyer.com/mobile-attribution-glossary/probabilistic-modeling/
 AppsFlyerによる、フィンガープリントに替わる新たな計測技術。

ただし、フィンガープリントの主要な特徴であるIPアドレスやユーザーエージェントなどの情報を使いユーザーを推定するというのは共通なので、実際にはフィンガープリントとは異なる技術ですが今回のインタビューでは便宜上フィンガープリントという言葉を使わせて下さい。

森下:分かりました。要は、フィンガープリントのようにIDFAマッチングを必要としないトラッキング方法だが、よりプライバシーに配慮した新たな計測方法をMMPが独自に開発しているのですね。

正田:仰るとおりです。

まず、今後シナリオ1になる場合は現状とあまり変わらないので、混乱はそれほど起きないと思います。アドネットワークやDSP等の媒体については、MMP側がフィンガープリントを置き換える技術で対応します。

森下:マーケターが対応するべきことはあまり多くはないようですね。

正田:はい。ただし、フィンガープリント計測に対応していない一部メディア(Google/Facebook/Twitter等のMMPとAPI連携している媒体)のことは別途考えておく必要があります。

現時点で分かっているのは、TwitterはATTで許可が取れれば従来どおり、許可が取れなければSKAdNetworkを使用するようです。FacebookもSKAdNetworkに対応する方針を発表しましたが詳細についてはまだこれから、Googleからはまだ発表がないためわかりませんが、恐らく3つとも基本的にはSKAdNetworkを使っての計測になるのではないかと思います。

Facebook
https://developers.facebook.com/blog/post/2020/12/16/preparing-partners-ios-14-mobile-web-advertising

Twitter
https://business.twitter.com/ja/a/ios14-update.html

いずれにせよ、API連携媒体に関してフィンガープリント計測に対応しない場合にはSKAdNetworkでの計測に替わることを想定しておいてください。

シナリオ1のまとめ

  • フィンガープリントに対応している媒体(ADNW・DSP)の場合
    →MMP側で計測に対応するので、広告主側で特に対応不要
  • フィンガープリント未対応の媒体(Google/Twitter/Facebook等のMMPとAPI連携している媒体)の場合
    →Twitter:ATT許可取れなかった場合、SKAdNetworkを使用
    →Facebook:SKAdNetworkに対応する方針を発表

想定シナリオ2:Appleがプライバシーポリシーを今まで以上に厳しく取り締まり、Differential Privacyに準拠した計測のみが許可されるようになる。

正田:シナリオ1でも、フィンガープリントを新しい技術で置き換えることでAppleの規制は回避できるかもしれませんが、やはり端末やネットワークの情報を勝手に利用して個人を特定できるという点はそのまま残ります。Appleがどこまで厳密に取り締まるのか現時点では不明ですが、個人を特定できる技術が全面的に禁止になる可能性は大いに有ります。

ただし、それについてもAppsFlyerは既に手を打っており、Advanced Privacy(高プライバシーモード という設定をオンにすることでDifferential Privacyに準拠し、Appleと同等レベルのプライバシー基準にすることができます。Adjustからは現状リリースが有りません。

森下:AppsFlyerやAdjustが対応するのであれば、この場合も特に混乱は起きないということでしょうか?

正田:あとで詳しく説明しますが、AppleのDifferential Privacyを遵守するに伴い、クリックID(Click ID)と呼ばれるデータが取れなくなります。これがかなり影響の大きい話で、もし起きた場合には、CPIの高騰などのダメージがあると考えられます。

なお、シナリオ1と2においてSKAdNetworkに対応している媒体であればSKAdNetworkとMMPの併用が可能です。SKAdNetworkを使う場合にしても基本的には各媒体のデータをMMPに戻しMMPでダッシュボードを見る形になるので、MMPで2種類のダッシュボードを確認することになります。MMPの計測を使う場合は、今までと特に変わりません。

シナリオ2のまとめ

  • (個人を特定できる技術が全面的に禁止になることから)Differential Privacyに準拠した計測のみが許可される
  • SKAdNetworkに対応している媒体の場合
    →SKAdNetworkとMMPの併用が可能

  • SKAdNetworkに未対応の媒体の場合
    →Differential Privacyに準拠したMMPで計測

想定シナリオ3:MMP独自の計測も許可されず、すべてSKAdNetworkに収束する。

森下:これがもっとも厳しいパターンですね。

正田:この場合、広告事業者の大半が瀕死の状態になると思います。たとえば、SKAdNetworkはアプリ系メディアでないとそもそも計測ができないので、WEB系メディアの割合が高い広告事業者は大打撃を受けることになります。

アプリ系メディアの場合はまだ生き残る可能性がありますが、今まで蓄積してきたノウハウが一気に崩れ去ることになるので、そこに対応できないメディアは同じく打撃を受けると思われます。

シナリオ3のまとめ

  • 計測方法がSKAdNetworkに統一

  • SKAdNetworkに未対応の媒体は代替手段なし

【重要事項】WEB系メディアへの配信比率が高い広告事業主は大打撃を受ける

予想として、現状とほぼ同じ配信ができる可能性が最も高い

森下:いまの3つのシナリオでいくと、どれが最も可能性が高いんでしょうか?

正田:僕は1の「現状とほぼ同じ配信ができる」パターンが最も高いと思っています。勝手な予想ですが、確率としてはシナリオ1が70%、シナリオ2が20%、シナリオ3が10%ほどじゃないでしょうか。

森下:理由をお聞きできますか?

正田:業界全体の動きですね。今回のIDFA問題で大きな影響を受けているのは主にMMP側ですが、彼らの対応を見ていると、シナリオ3はどこも想定していないと思われます。もしこのパターンであればもっと大きな動きが出てきているはずなので。

Appleに関しても、規約上禁止していることを必ずしも全て取り締まるとは限らず、例えば過去にリワードやブーストなど、実は規約上禁止されていても使うことができるマーケティング手法が多いのも事実としてあるので、こうした傾向からみるに、シナリオ2よりはシナリオ1の方が可能性が高いと思います。ただ、状況によっては変動するかもしれないので、一概には言えないですね。

SKAdnetwork導入前後で広告効果は変わる

マーケターが気になる巨大メディア(Google/Facebook/Twitter)の今後

森下:最も可能性が高いとされるシナリオ1の場合、フィンガープリント計測に対応していないメディアについて考えておく必要があるとのことですが、具体的にどういうことなんでしょうか?

正田:先程軽くお話しましたが、(広告枠としての)メディアというのは大きく2つに分かれていて、1つはアドネットワークやDSPなどのメディアです。ここはAdjustやAppsFlyerなどのMMPがフィンガープリント計測に対応しているので、マーケターが対応すべきことはありません。

もう1つは、Google、Facebook、Twitterのような巨大メディアです。彼らはMMPとの接続方法が異なっているので、フィンガープリントに対応していないことが多いです。ここについては気にした方がいいと思います。

森下:そうですよね。つまりシナリオ1の場合、マーケターが実際に気にかけて対応しておくべきなのはGoogle、Facebook、Twitterの3つになりますよね。この3つのメディアのトラッキングにはどういう支障があるんでしょうか?

正田:けっこう大きな支障があると思います。Facebook、TwitterはSKAdNetworkに対応することを発表していますが、Googleはまだ未定でフィンガープリントを導入するかどうかもまだ決定していないようです。

そして、SKAdNetwrokとフィンガープリント計測の一番の違いは「ビュースルーコンバージョンを取得できるか」なんですね。

この3つのメディアは、今までビュースルーをかなりトラッキングしてきたメディアです。なのでこのままSKAdNetworkだけに対応し、フィンガープリントに対応しないことを決めた場合、ビュースルーの分だけ広告効果が落ちる可能性があります。

森下:であれば、3つともフィンガープリントに対応するのが自然だと思うのですが、そうはならないんでしょうか?

正田:現状の動きを見る限りでは、このまま「フィンガープリントには対応しない」という可能性が高いです。そもそもフィンガープリントは、CookieやIDFAと違い、削除やリセットができず、広告事業者が強制的に取れてしまうデータなので、プライバシーに大きな問題があり、GAFAクラスが対応するのは少し考えづらいです。

また、FacebookとGoogleに関していうと、ビュースルーコンバージョンが多いとは言えども、そこまで依存しているわけではないんです。(SKAdNetworkで取得できる)クリックからのコンバージョンもかなりあるので、SKAdNetworkにだけ対応すれば「そこまで広告効果は落ちない」と判断している可能性があります。

森下:ということは、SKAdNetworkのクリック関係の数値だけで他のメディアと比べた場合、「結局FacebookとGoogleが費用対効果がよい」という結論になるかもしれないですよね。

appbrain_アトリビューション条件

正田:長期的にはそうなる可能性があると思っています。マーケターの場合、短期的にはSKAdNetworkとMMPの計測をどちらも使って「どれが一番効果が高いか?」を比べることになると思うんですけど、Google・Facebookという大きいメディアがSKAdNetworkでしか計測できないのなら長期的には「じゃあすべてのメディアをSKAdNetworkで比較しよう」という判断になると思います。

森下:そうですね。すべてのメディアを統一の基準で評価するなら、SKAdNetworkになると思います。

正田:ただ、SKAdNetworkはWEB系メディアの計測ができないのと、取れる指標が限られているので、直近2-3年はSKAdNetworkとMMP計測が並行して使われると思います。

ソシャゲで重要視されるTwitter広告における変化

森下:Twitterについては(ビュースルーコンバージョンが多いので)他メディアに比べてかなり広告効果が落ちる可能性がありますよね。日々予算を使ってアロケーションする側のマーケターとしては、このTwitterの乖離がもっとも困る部分かもしれないですね。

正田:そうですね。

森下:例えばブシロードのようにTwitterと非常に相性のいいゲームをよく作っている会社だと、判断が難しいと思っていて。

IDFAオプトイン化が始まったらTwitterの見かけのCPIは悪化すると思うんですけど、だからといってTwitterのMAUが減ったわけではないですよね。明らかに潜在ユーザーがいる場所なのに、計測の仕組みが変わっただけで予算をアロケーションするのはどうなのかと思います。計測ロジックが変わったところで、顧客がいなくなるわけではないので、ゼロベースで回収ロジックを再考する必要があります。

正田:そうですね。「計測が変わったところでユーザーはいる」というのは正しいと思います。

ただ、もしかするとTwitterの今までのCPIがよく見えていただけ、という可能性もあると思います。そこはマーケターそれぞれの判断になると思いますが、統一の基準で見たときに成果が悪いなら予算をアロケーションするという判断もあると思います。

森下:なるほど、確かにおっしゃるとおりです。

あとは、さらに困る点として既に配信しているアプリは、今までの計測数値からあるので、ATTフレームワーク実装後も数値の予測ができると思うんですが、ATTフレームワークに移行してからリリースするアプリはそういった推計すらできないのが痛いですね。

正田:そうですね。その場合はSKAdNetworkの数値をもとに、過去の他のアプリなどと比較するしかないと思います。

SKAdNetworkでLTVに関する数値を追うためのヒント

森下:さきほど少しLTVの話が出たんですけど、SKAdNetworkでもLTVの数値は追えるのでしょうか?

正田:そこが難しいところでして、たとえば、「ユーザーの課金額」も技術的にある程度までは追えますが、SKAdNetworkのポストバックはアプリインストール後に一度しか受け取れないので、広告主がどのタイミングでポストバックを受け取るかという選択をすることになります。データの質を取るか、速さを取るかというトレードオフが発生します。

いつ・どのようなデータをSKAdNetworkで受け取るかという設定にはコンバージョン値という物が使われるのですが、コンバージョン値はMMP側で設定することになるので、実際どのようなデータを受け取れるのかはMMPの仕様に準拠する形になります。

また、コンバージョン値を使えば課金以外のイベントも取得することも可能です。6つまでイベントを設定できますので、課金のデータに6つ割り当ててもいいし、リテンションの計測に割り当ててもいいし、そのあたりはマーケターの考えどころになると思います。

森下:コンバージョン値をどれくらい何に割り当てるかは、ゲームのサイクルにもよりますね。月に3回程度ガチャを更新するゲームはソシャゲでは一般的です。ガチャの頻度にあわせて課金データを取得すれば、LTVに近い数字は取れますね。

正田:そうですね、

森下:あとは、過去の実績などから広告経由と自然流入経由のLTVの差分を出して、「広告経由のLTVは自然流入経由のそれの80%程度だ」といったエビデンスに基づく算出式を作って予測を出すという方法もありますよね。今までの方法とSKAdNetwork上の方法を組み合わせて、なんらかの形でLTVを取得することはできそうですね。

正田:また、前述したAppsFlyerのAdvanced Privacyモードにおいても、インストールのポストバックがリアルタイムでは受け取れず、ランダムに遅延して送られてきたりします。これもSKAdNetworkと同様に、個人特定できなくさせるための仕様になっています。

【AppsFlyer】

  • イベント(課金/コンバージョン/エンゲージメント)は起動から24時間分しか取れない
    ※それ以上の期間はそこから推測する

  • Advanced Privacyモード(高プライバシーモード )をオンにするとSKAdNetworkに近しいプライバシー保護レベルになる
    ※Advanced Privacyモードをオフにすると、クリック IDの取得は可能

appbrain_appsflyer▲AppsFlyer「SKAdNetworkソリューションガイド (iOS 14)」https://support.appsflyer.com/hc/ja/articles/360011420698

 

【Adjust】 ※2020/12/24追記、今後も計測機能追加開発を計画中

  • SKAdNetworkのデータを可視化するAdjust独自の管理ツール「Adjust データスタジオ」を提供
    ※SKAdNetworkにおけるコンバージョンおよびイベントマッピングを簡単に設定可能

「Adjust データスタジオ(ベータ版)クイックスタートガイド」
https://help.adjust.com/ja/article/adjust-data-studio-quick-start-guide

「SKAdNetworkの設定」
https://help.adjust.com/ja/article/skadnetwork-settings

 

クリックIDの禁止は、計測システムが破綻するほど影響大

森下:ここまでシナリオ1についてお話してきましたが、可能性が低いとはいえども、一応シナリオ2の話も聞かせてください。まずシナリオ2で取れなくなるとされる「クリックID」とはどういうものなんでしょうか?

正田:広告のプラットフォーマーは、ユーザーが広告をクリックした時に、それに対してユニークなIDを付与するんです。これがクリックIDです。

その後、ユーザーがアプリをインストールすると、MMPに情報が送信されます。そのとき、MMPはクリックIDを広告プラットフォーマーに戻します。これによってデータ紐付けられるんですね。

つまり簡単にいうと、「この広告経由で、このユーザーがインストールした」というのを紐付けているデータですね。

森下:IDFAもほぼ同様のロジックで「この広告経由で、この端末でインストールした」という紐付けをしていると思うんですが、これはどう違うんでしょうか?

正田:仕組みはほぼ同じなんですが、IDFAは端末ごと、クリックIDはクリックごとに発行されるのが違います。

■クリックID(Click ID)とは

プラットフォーマーは広告配信時にユニークのIDを付与している。これによりユーザーがアプリインストール後、どの広告経由でユーザーがインストールしたのかIDで紐づく仕組み。

※IDFAは、端末ごとにユニークのIDなのに対し、クリックIDは広告をクリックする毎にユニークに発行されるID
※SKAdNetworkの場合は、クリックIDを返さない(個人が特定できる情報に値するため)

で、このクリックIDの最大の問題点は、実質個人が特定できてしまうというところです。

SKAdNetworkだとクリックIDを戻さないことでそれを回避しているんですが、AppsFlyerもそれと同じように個人を特定しない仕組みを準備していたんですね。ただ、それに対してプラットフォーマーや広告主から反発があって、今はAdvanced Privacyというモードをオンにした場合のみクリックIDを戻さないという仕様になっています。

森下:なるほど。では、この「実質個人が特定できてしまう」クリックIDが今後取れなくなることはありえますか?

正田:可能性は低く、今後取れなくなるとしてもまだ先になると思っています。なぜかというと、ものすごくクリティカルな問題で、それこそ大騒ぎになると思うんですよ。ADNWやDSPは基本全て裏側でクリックIDをベースにシステムを構成しているため、配信システム・計測システムが破綻しかねないほど影響の大きな話なので。

もし決定した場合でもさすがに移行期間などがあると思います。それをサポートする新たな技術が出てくる可能性もあります。クリックIDが取れないとなると、たとえフィンガープリントを使用したとしても、ユーザー単位のターゲティングができなくなるので広告効果が下がります。

森下:なるほど。では「シナリオ2については、発生するとしても移行期間があるはずなので、現時点でマーケターとして対応すべき(できる)ことは存在しない」という認識ですね。

正田:そうですね。このシナリオ2が起きてクリックIDがなくなる場合、マーケターがそれを想定して何かをする、というのはかなり難しいと思います。

まとめ:クリックIDが取得できなくなることは、配信システム・計測システムが破綻しかねないほどの影響がある。

(例)
 CPE広告の場合、成果地点に到達したユーザーが追えないので機能しなくなる
 SKAdNetworkで追う方法も残されているが、制約が多く難しい

→移行期間があるはずなので、現時点でマーケターとして対応すべき(できる)ことはない。

今後はよりフェアな広告評価ができるようになる

森下:ここまでIDFA問題による混乱や変化を聞いてきましたが、逆にこのIDFA問題によって改善される点やメリットなどはありますか?

正田:WEBとアプリで計測の有利・不利がなくなることですね。いままではアプリだけにIDFAがあって、WEB系メディアにはなかったので計測上不利でしたが、今後は平等に評価できるようになると思います。

森下:不勉強で恐縮ですが、アプリ面でのみIDFAが取得でき、WEB面でIDFAが取得できないことは理解しているのですが、それが計測上の有利・不利につながる理由を教えて下さい。

正田:IDFAはユーザーを100%特定できる識別子なのに対し、フィンガープリントは90%前後の精度でユーザーを推定する技術なので、アトリビューションとしては確実に正しいIDFAが優先されています。

アトリビューションの優先順位は常に、

「IDFA有りのクリックスルーコンバージョン > IDFA無しのクリックスルーコンバージョン > IDFA有りのビュースルーコンバージョン > IDFA無しのビュースルーコンバージョン」

という順番になります。

Web面の広告をクリックした直後にアプリをインストールした場合でも、先に他のアドネットワーク等でアプリ面の広告がクリックされていた場合そちらの成果となります。

また、IDFAが無い場合はアトリビューションウィンドウも短くなります。

森下:なるほどです。詳細説明ありがとうございます。

正田:あとは、MMPとAPI連携してトリッキーな計測をしていた事業者もいなくなるので、計測上の数値はいままでよりも正しい情報になると思います。

森下:以上をまとめると、今まで「WEBとアプリ」「巨大メディアとそれ以外」で統一の基準がなかったのが、SKAdNetworkという基準ができることでフラットに評価できるようになるということですね。

正田:そうですね。どのシナリオになったとしても、今までよりフェアな計測が可能になると思います。なので、本来効果が出ているメディアに、より広告予算が投下できるようになるのではないかと思います。

森下:なるほど。ここまでの話を受けてマーケターとしてするべきことは、まずシナリオ1を想定すること。そのうえで、SKAdNetworkが効果を比較する統一の基準になり得ると理解した上で、当面はSKAdNetworkとMMP両方の管理画面で計測すること。API連携媒体を中心にフィンガープリント計測ができないメディアの評価方法を検討しLTVの数値をどう取るかを推計ロジックを組むこと、といったところが対応のポイントになりそうですね。

あとは、現状できることが少ないとはいえ正田さんによるシナリオ2とシナリオ3も想定し、情報を把握しておくこと。

今回の話とはまったく別の話になりますが、マーケターはこのように「ポジティブ」「コンサバ」「ネガティブ」のような3種のシナリオを作って、そのシナリオそれぞれに対して準備をするということがよくあります。アプリのリリース前に売上の予測を3パターン立てて「それぞれの場合で自分がするべきこと」を洗い出しておくといった作業です。

起こりうる全てのシナリオに対して入念に準備することで、どのパブリッシャーよりもマーケティング施策において先手を打てるのではないでしょうか。

まとめ:

  • 最も可能性の高いシナリオ1【フィンガープリントを置き換える技術での計測が継続され、現状とほぼ同じ広告配信が可能】を想定

  • 将来的にSKAdNetworkが効果を比較する統一の基準になり得るが、当面はSKAdNetworkとMMP計測の両方をMMP管理画面で確認

  • API連携媒体(Google/Facebook/Twitter等)を中心にフィンガープリント計測ができないメディアの評価方法を検討し、それぞれのLTVの数値をどう取るかを推計ロジックを組む


※本記事における3つの想定シナリオは、2020年12月時点インタビュイーの仮説・見解であり、全ての内容がAppleの公式発表に基づくものではありません。(2021/1/18追記)

 

 

ウェビナー開催のお知らせ

※本記事に関連した、アプリマーケター向けウェビナーを来月開催いたします

PR_appbrain_SGMS

【APP BRAIN×SGMS共催】迫る「IDFA問題」へ対応するため、アプリマーケターが抑えておくべき変化

今回の対談内容に加え最新情報を交えつつ、IDFA問題に対応するためアプリマーケターが抑えておくべきポイントをお二人に語っていただきます。

開催日時:2021年1月28日(木) 13:00~14:30
形式:ZOOM
登壇者情報:正田英之(株式会社Alpha 代表取締役) 
      森下 明(株式会社ブシロード 広報宣伝部 副部長)
モデレーター:佐藤 基(株式会社MOTTO)

ウェビナーのお申し込みはこちら


<プロフィール>

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正田英之
株式会社Alpha 代表取締役
スマホアプリに特化した広告プラットフォーム「3D AD」を運営。
会社HP https://alpha.inc/
note https://note.com/syouda
Twitter https://twitter.com/syouda

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森下 明
株式会社ブシロード 広報宣伝部 副部長
デジタルマーケティング部門立ち上げのために2018年1月に株式会社ブシロード入社。新卒から一貫してデジタルマーケティング領域に従事しており、特にモバイルマーケティング領域が強み。 以下SNSで情報発信中ですので是非、フォローください。
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note https://note.com/akira19881010

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